「頑張って。」
「大丈夫。」
「気にしなくていいよ。」
子どもが不安そうな時、多くの親は励まそうとします。
もちろん、その言葉も大切です。
でも、もっと大切なことがあります。
それは、子どもの心の中に、どんな「親の声」を残すか。
今日はそんな話をします。
子どもは、大人になっても「親の声」を聞いている

いきなり結論のようですが、この記事で一番伝えたいのはここです。
親の言葉は、その場で終わりません。
子どもの心の中に残って、大人になった後も再生され続けます。
人は、自分に話しかけながら生きている
セルフトークという言葉を聞いたことはありますか。
セルフトークとは、心の中で自分自身にかけている言葉のことです。
失敗した時や緊張した時、人は必ず、心の中で自分に何か話しかけています。
「また失敗した」
「私ってダメだな」
「まあ、次があるか」
同じ出来事でも、この声が何を言うかで、立ち直りの早さはまったく変わります。
その声は、親から受け継がれることがある
カウンセラーをしていた頃、こんな言葉を何度も聞きました。
「何かあると、『だからダメなんだ』って自分に言っちゃうんです」
「失敗すると、『我慢が足りない』って責めてしまいます」
話を聞いていくと、それは幼い頃、親から繰り返し聞いてきた言葉でした。
親は、傷つけようと思って言ったわけではありません。
むしろ、しつけや励ましのつもりだったことがほとんどです。
でも、繰り返し聞いた言葉は、いつのまにか「自分が自分にかける声」になります。
親の声は、やがて子ども自身の声になるのです。
これ、心理学では「内在化」って呼ばれてるんだけど、要するに「外から聞いた声が、心の中の声になる」ってこと。
大人になってから自分を責めちゃう人は、意志が弱いんじゃなくて、そういう声を受け継いだだけなんだよね。
親から受け継いだ声のルーツが気になる方は、こちらの記事もどうぞ。
じゃあ、どんな声を残したい?
ここで、質問です。
あなたのお子さんが大人になって、一人で不安な夜を過ごしている時。
心の中で再生される「あなたの声」は、何と言っていてほしいですか。
「そんなことで泣かないの」でしょうか。
それとも、「大丈夫、またやってみよう」でしょうか。
子育てって、実はこの声を吹き込んでいる時間なんです。
子育ての目的は、「転ばせないこと」ではありません

親は、子どもに失敗してほしくないと思うものです。
危ないものは先回りして取り除きたくなるし、つまずきそうな道は避けさせたくなります。
でも、心の中に残る声のことを考えると、親には失敗を防ぐことよりも大事な役目があります。
転ばない人生は、ない
受験に落ちたり、友達とこじれたり、仕事でつまずいたり。
どれだけ守っても、子どもはいつか必ず転びます。
転ばない人生は、存在しません。
だとしたら、親にできるのは「転ばせないこと」ではなくて、「転んだ後に立ち上がれる力を育てること」です。
そして立ち上がる時に一番効くのが、さっきのセルフトーク。
心の中の声なんです。
「失敗させたくない」って気持ち、痛いほどわかります。
でもね、失敗を全部取り除くと、レジリエンスを練習する機会も一緒になくなっちゃう。
転ぶ経験そのものは、悪者じゃないんだよね。
「心の中のコーチ」を育てるということ
私は、この声のことを「心の中のコーチ」と呼んでいます。
心の中のコーチとは、困った時に自分を責めるのではなく、状態を認めて、落ち着かせて、背中を支えてくれる内側の声のことです。
たとえば、子どもが緊張している時。
「そんなことで緊張しなくていい」ではなく、
「緊張してるね」
まず、今の状態をそのまま認める。
「深呼吸してみよう」
次に、身体を落ち着かせる方法を一緒にやる。
「いつも通りで大丈夫」
最後に、結果ではなく、その子自身を支える言葉をかける。
実はこの声かけ、私自身が緊張した時に、自分にかけてきた言葉です。
カウンセラー時代には、相談に来た方にも伝えてきました。
そして先日、初めて我が子に言いました。
「緊張してるね」
その瞬間、あ、私は今、この子の心の中に声を吹き込んでいるんだな、と思ったんです。
「緊張しちゃダメ」より「緊張してるね」の方が、脳は安心するんだよね。
不思議だけど本当。
自分の中の声が、自分を責める側にまわっている方は、こちらの記事もどうぞ。
子どもが一人になった時、本当の子育てが始まる
受験当日や就職の面接、初めての一人暮らし。
親が隣にいられない場面は、これからどんどん増えていきます。
でも、隣にいられなくても、声は残せます。
大人になって緊張した時や、失敗して落ち込んだ時。
「緊張してるね」
「深呼吸しよう」
「またやってみよう」
誰もいない部屋で、その声が心の中から聞こえてくる。
それが、親が子どもに残せる、一番長持ちする贈り物だと思うのです。
子どもの自己肯定感を育てたい方は、こちらの記事もどうぞ。
まとめ:転ばない子より、立ち上がれる子に
子どもが困った時、親が隣にいられる時間には限りがあります。
だから私は、問題を解決してあげる親ではなく、困った時に心の中で「大丈夫」と声をかけてくれるコーチを育てたい。
転ばない子ではなく、転んでも立ち上がれる子になってほしい。
そのために今日も、「頑張れ」ではなく、「緊張してるね」と言える親でいたいと思います。
親の声は、子どもの心の中で生き続けます。
どうせ残るなら、その子を一生支える声を残しませんか。


