認知の歪みに気づく

「わかっているのに変われない」のは自然なこと。アダルトチルドレンの認知の歪みの直し方

「なんでもいいよ」と言いながらみんなの顔色をうかがったり、ちょっとした指摘で一日中落ち込んだりすることはありませんか。

頭では「気にしすぎだ」とわかっているのに、同じ場面になるとまた同じ反応をしてしまうんです。

こうした考え方の癖は、育った環境を生き延びるために身につけたものだったりします。

だから根が深くて、知識として理解しただけではなかなか変わりません。

この記事では、癖ができる仕組みと見直し方を、心理学の知見をもとに解説します。

時間はかかりますが、向き合った先で生きづらさが軽くなる可能性は十分にあります。

認知の偏りは「生き延びるための工夫」から始まる

淡いピンクがかった白いカーネーションのクローズアップ

考え方の癖と聞くと、性格や努力の問題のように感じるかもしれません。

でも心理学では、物事の受け取り方は、これまでの経験や人間関係のなかで少しずつ形づくられていくものだと考えられています。

(出典)厚生労働省「心の健康」>「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」

子どもは家庭の空気から「自分についてのルール」を学ぶ

子どもにとって、家庭は世界のほぼすべて。

親の機嫌がころころ変わる家で育つと、「今日は大丈夫かな」と常に空気を読むようになります。

何をしても否定される家なら、「自分の考えは間違っている」と学んでいくんです。

なかには、親を慰めたり機嫌を取ったりする役割を背負う子どももいます。

本来は親が子どもを支えるはずの関係が逆になる状態で、心理学では「役割逆転」と呼ばれています。

こうした家庭で育った人は、「良い子」として周りに合わせすぎて、ありのままの自分を出しにくくなるとも言われているんですね。

(出典)J-STAGE「大学生における親子関係の役割逆転に関する研究」

安心できない家庭で育ち、大人になってもその影響を抱えている人は、アダルトチルドレンと呼ばれることがあります。

Kumi
Kumi
私は、親が毒親だったと気づいたのが全ての始まりでした。

乗り越えたくて、心理系の本や記事を片っ端から読みまくったんです。

お母さんとの関係が、その後の考え方や人間関係にどうつながっていくのかは、こちらの記事でくわしく書いています。

核になる思い込みは、枝分かれして行動ルールになる

頼まれごとを断れずに引き受けてしまったり、休んでいるだけなのに罪悪感でそわそわしたりすることはありませんか。

こうした行動の奥には、たいてい「自分はこういう人間だ」という思い込みが隠れていたりします。

認知療法では、この深いところにある思い込みを「スキーマ」と呼ばれ、「〜しなきゃいけない」というルールの形で毎日の行動を決めています。

そしてちょっとした場面になると、パッと浮かぶ考えとして表に出てくるんです。

この勝手に浮かぶ考えは、「自動思考」と呼ばれています。

(出典)厚生労働省「心の健康」>「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」

たとえば「自分には価値がない」というスキーマを持つ人は、「役に立たないと見捨てられる」というルールを抱えやすくなります。

すると頼まれた瞬間に「断ったら終わりだ」と浮かんで、つい引き受けてしまうんですね。

根っこがひとつでも、そこから伸びる枝はたくさんあるので、ひとつの癖を直したつもりでも、別の場面で似た反応が出てきます。

Kumi
Kumi
私の核は「ありのままの私は人から嫌われる。ありのままで存在していてはいけない」でした。

そこから「否定されないように相手に合わせる」「バカにされないように明るく頭良さそうに振る舞う」「失敗しないように挑戦しない」って、細かい禁止がいっぱい枝分かれしてたんです。

なぜ考え方の癖は、わかっていても変わらないのか

絡まった白い紐が、向かい合うもう一人の頭の中で渦巻き状に整っている横顔シルエットの写真

思い込みに気づけば考え方も変えられる、と思って取り組んでみたのに、また同じ反応をして落ち込む人は少なくありません。

癖がなかなか変わらないのには、ちゃんと理由があるんです。

避けることが、思い込みを守り続けてしまう

例えば、「人前で話すと笑われる」と思っている人がいたとします。

その人が発表の場を避け続ければ、不安からは逃れられますよね。

でもそのぶん、「話してみたら誰も笑わなかった」という経験をする機会もなくなってしまうんです。

認知行動療法では、不安を一時的に下げるためにとる行動を「安全行動」と呼びます。

目を合わせない、なるべく黙っているといった行動も、安全行動のひとつです。

こうした行動は、続けるほど不安を長引かせてしまうんです。

(出典)厚生労働省「心の健康」>「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」

相手の顔色を常にうかがうことも、身を守っているようで、思い込みのほうを守ってしまっていたりするんですね。

Kumi
Kumi
私は、仕事で指摘されると、存在ごと否定された気持ちになっていました。

そうなると、もうやらない。他のことで気をそらす。

逃げてる間は楽なんだけど、何も変わらないんだよね。

頭でわかっても、身体が先に反応してしまう

「この人は責めているわけじゃない」と頭ではわかっているのに、胸がざわついたり顔が熱くなったりすることがあります。

考え方の癖は、子どもの頃から何千回、何万回とくり返してきた反応です。

そのぶん、頭で考えるより先に身体が反応してしまう。

わかったのにすぐ変われないのは、自然なことなんです。

認知の偏りを見直していくための方法

ピンクと青のグラデーション背景に、右上から白い光が放射状に広がる画像

送ったLINEに返事が来ないだけで、「何か怒らせたかな」と頭をよぎること、ないですか?

こうした「自動思考」は勝手に浮かぶので、放っておくと同じ場面でまた同じ考えが出てきます。

自動で出てくるものだからこそ、手動でいっこいっこ、気づいて見直していく必要があるんです。

まずは癖に名前をつけてみる

自分の考え方のどこに偏りがあるのかは、自分ではなかなか見えません。

そこで役に立つのが、よくある考え方の偏りを分類した「認知の歪み」のリストです。

代表的な10のパターンを紹介するので、自分に当てはまるものがないか探してみてください。

  1. 全か無か思考:少しでも失敗すると「全部ダメだった」と感じる
  2. 一般化のしすぎ:一度うまくいかなかっただけで「いつもこうだ」と思う
  3. 心のフィルター:ひとつの悪いことばかり気になって、良いことが見えなくなる
  4. マイナス化思考:ほめられても「お世辞だろう」と打ち消してしまう
  5. 結論の飛躍:返事が遅いだけで「嫌われた」と決めつける
  6. 誇大視と過小評価:自分の失敗は大きく、できたことは小さく見積もる
  7. 感情の決めつけ:「不安だから、きっと悪いことが起きる」と、感じたことを事実だと思い込む
  8. すべき思考:「〜すべき」「〜しなければ」で自分を追い込む
  9. レッテル貼り:ひとつのミスで「自分はダメな人間だ」と決めてしまう
  10. 自己関連付け:周りで起きた悪いことを、なんでも自分のせいだと考える

(出典)独立行政法人国立病院機構 鳥取医療センター「認知のゆがみ 10パターン」

読みながら「これ、私のことかも」と思うものがあれば、それが自分の考え方の癖です。

「つらい」を合図に、なぜを掘り下げる

こうした思考の癖に気づくきっかけとしてわかりやすいのが、「つらい」と感じた瞬間です。

つらいと感じたら、「なぜこんなにつらいんだろう」「何を言われた気持ちになったんだろう」と問いを重ねてみてください。

たとえば、資料のミスを指摘されてひどく落ち込んだとします。

掘り下げると、「ミスを指摘された」が「仕事ができないと思われた」になり、その奥で「できない自分には価値がない」にたどり着く。

苦しかったのは、ミスを指摘されたことより、「できない自分には価値がない」という思い込みのほうだったんですね。

そうとわかれば、次に指摘されたときも「また『価値がない』が出てきたな」と気づけるようになります。

「なんで?」の重ね方は、嫌な出来事をきっかけにした具体的な手順をこちらで紹介しています。

小さな「大丈夫」を積み重ねて、思い込みを書き換えていく

思い込みの正体がわかっても、実感として変わるには実際の経験が必要です。

認知行動療法には「行動実験」という方法があります。

思い込みを予想として立て、実際に行動して、結果を確かめるやり方です。

「断ったら嫌われる」と思っている人なら、小さな頼まれごとを一度だけ断って、相手の反応を見てみる、といった方法です。

(出典)厚生労働省「心の健康」>「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」

1回で信念が変わることは、まずありません。

怖いまま小さく試して、「大丈夫だった」を何度も積み重ねていくことが大切です。

Kumi
Kumi
例えば過去の私だと、指摘されたら「これは私を責めているのではない」って心で唱える。

ミスはちゃんと謝って、次どうしようって考える。

結果、誰にも嫌われなかったし、ミスも減りました。

これを繰り返してたら、だんだん怖くなくなりました。

見直しを続けた先と、知っておきたい現実

手をつないだ紙の人形が並び、長い影が斜めに伸びているセピア調の写真

見直しを続けても、ある日を境に急に楽になるわけではありません。

取り組む前に知っておいてほしい、現実的な話をお伝えしますね。

変化は、10年単位で静かにやってくる

認知の歪みという言葉を知った日は、「これで全部わかった」と感じるかもしれません。

ただ、知ることと変わることのあいだには、長い道のりがあります。

気づいては振り返る、という繰り返しのなかで、見つかる頻度は少しずつ減っていきます。

変化の速さは人によって違うので、他人と比べずに進めていいんですよ。

Kumi
Kumi
ネットで見つけた認知の歪みリストを手帳に書き写したとき、「これを直していけばいいんだ!」って正解が見つかった気持ちでした。

そこから楽になるまで10年単位。

最初は見つかりまくりだったのが、今は年に一回あるかどうかです。

自分を責める癖を、ジャッジという切り口から見直してみたい人は、こちらもどうぞ。

専門家の力を借りるのは、遠回りではない

ここで紹介した方法は、ひとりでも試せます。

ただ、長年の思い込みにひとりで向き合うのは、想像以上に時間も気力も使います。

カウンセラーや公認心理師、精神科や心療内科の医師と一緒に取り組めば、ひとりでは気づけない視点をもらえます。

気分の落ち込みが続いている、日常生活に支障が出ているといった場合は、早めに相談してください。

専門家との相性もあるので、最初の人と合わなければ、別の人を探してみるのもひとつの方法です。

ひとりで続けるなら、ノートや検索、AIとの対話など、頭の中を外に出して眺められる場所を持っておくと続けやすいです。

まとめ

読みながら、10のリストのどれかに「これ、私かも」と思った人もいるんじゃないでしょうか。

その名前が手元にあると、次に同じ考えが浮かんだとき「あ、これだ」と気づけるようになります。

見直しには時間がかかりますし、何度も同じところでつまずいたりもするんです。

それでも、気づくたびに反応は少しずつ変わっていきます。

まずは今日見つけたひとつを、覚えておくところから始めてみてください。

  • この記事を書いた人

Kumi(板山 久美子)

恋愛・心理コミュニケーションライター/元カウンセラー パートナーシップや人間関係をテーマにしたメディアを複数運営。 カウンセラーとしての実務経験をもとに、心理学・自己理解・対人関係に関する記事を多数執筆。 アメブロでのカウンセラー活動時にはフォロワー1,500名・公式LINE60名の実績あり。

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