自己肯定感が低くて苦労した人ほど、「子どもには同じ思いをさせたくない」と思うでしょう。
だから褒める。
否定しない。
失敗しないように先回りする。
「あなたはすごい」「あなたはできる」と伝え続ける。
それ自体は、愛情から来ているものです。
でも、そうやって育てた子どもが社会に出て、なぜかうまくいかない、というケースがあります。
自己肯定感を高めようとしたはずなのに、何かが違った。
その「何か」について、今日は考えてみます。
「自己評価を上げること」と「自己肯定感の土台」は、別の話

自己肯定感というと、「自分を好き」「自分に自信がある」というイメージを持つでしょう。
でも心理学的に言う自己肯定感の土台は、少し違うものを指しています。
土台は「自己評価の高さ」じゃない
本当の自己肯定感の土台というのは、「何があっても自分は大丈夫」という感覚のことです。
うまくいかなくても、失敗しても、誰かに否定されても、自分という存在が揺らがない。
そういう、内側からの安定感のこと。
これは、褒められることで育つものではないんです。
褒められることで育つのは、「自分はすごい」という自己評価です。
自己評価と土台は似ているようで、根っこが違います。
自己評価は、外側からの評価に依存しやすい。
だから、「すごいね」と言われ続けた環境から出たとき、急に根拠がなくなってしまいます。
土台は、経験の積み重ねから育ちます。
やってみた、うまくいかなかった、それでも何とかなった。
その繰り返しが、「大丈夫」という感覚を少しずつ作っていくんです。
でも褒めるだけだと、褒められないと不安になる子になりやすいです。
土台って、もうちょっと地味なところで育つんだよな。
土台のない自己評価は、こんなふうに出てくる
身近にこういう人がいないでしょうか。
自信があるように見えるのに、やたら人をディスる。
会話の中にじわっとマウントが混ざってくる。
褒められると嬉しそうなのに、何か足りなそうにしている。
わたし自身、そういう人を見ていて「なんでこの人、自己肯定感高そうなのにこういうことするんだろう」とずっと疑問でした。
観察していてわかったのは、ディスやマウントって、自分の位置を確認するための行動だということ。
「あの人より上」という比較で安心を得ようとしているんです。
これが、土台のない自己評価の出方です。
外からの「すごい」で自己評価は高くなった。
でも「何があっても大丈夫」という土台がないから、常に何かで埋めようとする。
物を買う、刺激を求める、誰かを下に見る。
満たされない感覚は、そこから来ていることが多いんです。
責める気にはなれないけど、距離は取りたくなります。
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なぜ先回りすると、土台が育ちにくいのか
失敗しないように先回りする。
困る前に助ける。
傷つかないように守る。
これも愛情からくる行動です。
でも、土台を育てる機会を奪っていることになります。
土台の材料は、「自分でやった」「うまくいかなかったけど何とかなった」という経験です。
先回りされて育つと、失敗したときの対処法を学べません。
困難に当たったとき、「どうすればいいかわからない」だけでなく、「こんなはずじゃない」という感覚が先に来てしまう。
社会と家庭では、評価のされ方が違います。
頑張っても「まあ当然でしょ」と扱われる場面がたくさんあります。
そのギャップを受け止める土台が育っていないと、折れやすくなってしまう。
でも「転ばぬ先の杖」が多すぎると、転び方を覚えられないままになってしまうんです。
土台を育てるために、親にできること

では、どうすればいいのか。
難しいことじゃなくて、方向性を少し変えるだけでいいんです。
年齢に合った「失敗できる場」を作る
土台は、小さな失敗と回復の繰り返しで育ちます。
大事なのは、「安全な失敗」を経験させること。
取り返しのつかない失敗ではなく、この年齢でできる範囲の挑戦をして、うまくいかなくて、でも何とかなった、という経験です。
小さい頃なら、自分でやりたいと言ったことをやらせてみる。
うまくできなくても、すぐ助けに入らない。
少し待って、自分で何とかしようとする時間を作る。
学齢期なら、友達とのトラブルをすぐ解決してあげない。
本人が考えて動く余白を残す。
失敗しても大丈夫だった、という経験が積み重なるほど、土台は厚くなっていきます。
手を出したくなるのをぐっとこらえる、あの感じ。
でもそこが大事な場面だったりします。
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「結果」より「プロセス」を見る
褒めるなということではないんです。
何を褒めるか、の話です。
「すごい、100点だった」より「最後まであきらめなかったね」。
「うまくできたね」より「自分でやってみたんだね」。
結果ではなくプロセスを見ることで、「うまくいかなくても、やろうとした自分はOK」という感覚が育ちやすくなります。
これが、土台につながる褒め方です。
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親自身の土台を見直す
最後に、少しだけ難しい話をします。
子どもの土台を育てようとするとき、親自身の土台が揺れていると、どうしても先回りや過評価が増えやすくなります。
「この子に失敗させたくない」という気持ちの奥に、「失敗した自分はダメだ」という感覚が残っていると、子どもの失敗が自分のことのように怖くなる。
子どもの自己肯定感の土台を育てることと、自分自身の土台を見直すことは、実はつながっています。
親自身が「何があっても大丈夫」と思えるほど、子どもの失敗を穏やかに見守れるようになります。
先回りしてきたのも、過評価してきたのも、愛情からだよ。
ただ、方向を少し変えられる、という話です。
土台は、あとから育てられる
子どもの自己肯定感の土台が育っていないと気づいたとき、責める必要はないんです。
褒めて育てたのも、先回りしてきたのも、愛情からだった。
ただ、方向を少し変えられる、というだけの話です。
土台は、何歳からでも育てられます。
小さな失敗を経験させる。
プロセスを見る。
親自身が「大丈夫」と思える場所を作っていく。
その積み重ねが、じわじわと子どもの内側に「何があっても大丈夫」という感覚を育てていきます。
完璧な親でなくていい。
方向を知っているだけで、変わっていくものがあります。


